従来のブランディングは消費者や顧客を対象としたものでした。しかし近年は人材採用を目的としたものや、従業員など社内のモチベーション向上のために行われるもの(インナーブランディング)が注目されています。
この記事では、従来のような消費者向け(または採用向け)のブランディングを主体とした効果と手法について取り上げ、インナーブランディングを補足的に解説します。
このうち、Appleは1997年に革新的なテレビCMを流しました。
そのCMでは製品について一切触れられず、革新的に時代を変えてきた偉人のことのみを語る内容です。
当時のスローガンは「Think Different.」でした。
結果、人々は現在もAppleに対し「斬新」「革新的」というイメージを共有しています。
新製品に対し「今までにない新しい体験がある」と、詳細を聞かずとも予感できる信頼をAppleは作り上げたのです。今でも繰り返し事例に上がる伝説のCMですね。
私は、こちらのCMも大好きです
社内向けのブランディングは「インナーブランディング」と呼称されます。 外向けのアウターブランディングを実のあるものにするためには、インナーブランディングは両輪で考える必要があります。
その成功事例として以下の企業があります。
このうち、トランスコスモスは自社を「謎の大企業」と定義した衝撃的な採用ブランディングを行いました。トランスコスモスはビジネスアウトソーシングを手がける大企業です。しかし、求職者からは「何をしている会社か分からない」と言われてきました。
そこで自ら「謎の大企業」を名乗る戦略により、注目と企業理解を高めたそうです。結果、応募者は大幅に増加し、採用現場以外でも認知度を向上させることに成功したのです。
採用プロジェクト自体はアウターブランディングの範疇ですが、自分たちを「謎の大企業」と定義して社内に浸透を図ったのは優れたインナーブランディングと言えるでしょう。
ブランディングにはさまざまな手法があります。 自社がブランディングに求める目的と効果を明確にした上で、適切な手法を検討することが重要です。
今回はブランディングの効果について、メディアごとに解説します。
Webサイトを利用するメリットはその速さと接触する消費者の数。
時間や場所を問わないことがWebサイトの特徴であり、効率的にブランドへの理解を高められます。
また、Webサイトが消費者との最初のタッチポイントであることも多く、成功すれば加速度的にブランド価値が向上します。
ブランディングの本質は「自社の価値」を伝えることです。
そのため、消費者と企業が対等な関係でつながり、お互いが発信者となるSNSはブランディングに適したツールといえます。
SNSであれば、企業が個人と「直接」つながるため、他の手法よりも近い距離で自社の価値を発信できます。
主体性を持って企業と接点を持ってもらえ、ユーザーにブランドへの愛着をより持ってもらえるでしょう。ただし、SNSを広告プラットフォームとして考えるとリスクが大きいので、広告コミュニケーションの方法には気をつける必要があります。
YouTubeを利用するメリットはSNSとの親和性です。
CMと違って15秒や30秒といった制限がないため、ブランドのアイデンティティを載せた映像作りがやりやすいとも言えます。ユーザーに動画を「面白い」と思ってもらえたとき、SNSで共有することも容易ですし拡散の機会を作りやすいメディアです。
また、企業がSNSブランディングをする際にも、自社のYouTube動画をSNS発信すれば相乗効果を狙えるでしょう。
動画は音と映像と言葉の三要素を用いて構成されます。そのため、作り手と受け手の認識に乖離は生じにくいのです。文章だけで説明されるよりも、動画の方が人間は記憶に残りやすいとされています。そして何より、媒体費用のコストが低いというのも、大きなメリットのひとつです。
CMは、ブランドが持つ世界観を広く多くの人々に伝えることに長けた手法です。したがって、ブランド価値を持続させる手段としても長けているといえるでしょう。
Youtube動画が、ターゲットを指定してブランディングコンテンツを表示させるミドルファネルに向けた手法だとすれば、TVCMは、とにかく接触数の多さに主眼を置くトップファネルに向けた手法と言えるでしょう。
「ひとくち齧られたリンゴ」をイメージしたとき、少なくない人が連想するのはApple社ではないでしょうか
優れたコーポレートロゴは、ブランドを圧縮する装置といえるでしょう。
また、ブランド価値の高いロゴは象徴的な共通言語ともいえます。
ロゴにはユーザー間の結束を高める効果もあるのです。
コーポレートロゴはCI(コーポレートアイデンティティ)としてひとまとめに語られがちですが、CIについても別の機会にご紹介しようと思います。
測定したい効果ごとに幾つかの手法を紹介します。
新規接触率とは、Webサイトや広告によってブランドに接触した人のうち、初めてブランドを知った人の割合です。
新規接触率(%) = 新規のUU ÷ 全UU × 100
という計算式で求められます。
ここでの UU(ユニークユーザー)とは、一定期間にWebサイトや広告を見た(表示させた)人数です。回数ではありません。
新規接触率が高いほどその媒体はブランドの認知度を上げる効果があり、ブランディング効果があったと判断できます。
サーチリフトとは、広告配信の前後でブランド名や商品(サービス)名の検索数がどの程度増えたかを測定することで、広告がブランドへの関心に及ぼす効果を測定する方法です。
サーチリフト = 広告配信後の検索数 ÷ 広告配信前の検索数
という計算式で求められます。
サーチリフトが高いほど関心を集めているという意味で、ブランディング効果があったと判断できます。
ブランドリフトとは、広告を見る前後で消費者のブランド認知や購買意欲にどのような差異が見られるかを判定する方法です。
広告を見たユーザーと見ていないユーザーのそれぞれに対してアンケートバナーを表示し、回答された内容を比較してブランディングの効果を測定します。
調査方法は次の2種類です。
Webに限っていえば「広告宣伝費÷獲得した成果数」が低いほどブランディングの費用効率は高いといえます。いわゆるCPAといった指数で表されるものですが、Web広告を実施した場合は非常に重要な測定項目になります
(ブランディングというよりターゲットとマッチングするWEBマーケティングの領域になってきますのでここでは割愛します)
エンゲージメントとは企業と消費者の親密度を表す指標で、SNSにおいては「いいね」「コメント」「フォロー」のほか、投稿に対して行ったなんらかのクリックの数で表されます。
ブランディングを目的としたSNSアカウントや投稿に対するユーザーのリアクションが増えれば、ブランディング効果があったと判断できます。
ただしエンゲージメントは悪い評価の場合にも増えるため、単純に数値を見るだけでなく意味を考えて評価する必要があります。
「顧客数×平均客単価×平均購入頻度×平均継続期間」が高いほど、ブランドの支持が高いといえます。
いわゆるLTVと呼ばれるLife Time Value(ライフ タイム バリュー)の略です。この「顧客生涯価値」を高めることがブランドの長期的な利益につながるわけですが、もちろん一朝一夕に高まるわけではありません。
さまざまなアクションを積み重ねた結果、このLTVが向上すると考えましょう。
ブランド内部の価値を高めるためのインナーブランディングでは、従業員がブランドの理念を共有して実践しているかなど、モチベーションや帰属意識を測定する必要があります。
測定方法としていくつかの切り口がありますが、
などの定量化手段があります。
組織サーベイはさまざまな質問を投げかけて回答を得るため、従業員の意識や認識のような定性的な現状把握も可能です。
さらにミーティングや面談からのフィードバックも評価します。
ブランディングで効果を上げるために必要なステップとして4つのポイントを解説します。
ターゲティングと目標設定はとくに重要であるといえるでしょう。
ブランディングとは差別化であるため、他社や市場に対して自社の価値を示せるような独自性・優位性が必要です。
また、それはターゲットとなる顧客から見た価値であることも押さえる必要があります。
顧客に価値を感じてもらえたり、顧客自身が気づいていない価値を知ってもらうことが重要です。それらを前提として自社の価値を見つけ出し、言語化・可視化によって強みであることを明確に示します。
ターゲティングを行う目的は、自社を必要とする顧客を明確にし、プロモーションを効果的にすることです。
価値観やニーズが多様化している現代では、切り口によって評価が異なり、競合との位置関係も変わってきます。
自社の価値を訴求する相手として、顧客以外にも求職者や従業員などの立場の違いがあります。顧客においても年齢や性別、職業やライフスタイルの違いがあり、メインターゲットは明確化が必要です。
プロモーションやサポートなど、ターゲットとの接点では一貫したサービスを提供します。
ブランディングの効果はなんらかの方法で把握し、施策の実施前と比較できる必要があります。
そのためには、数値目標を立てることが重要です。
市場シェアや売上、顧客の認知度、従業員の満足度など、数値で把握可能な目標(KPI)を設定します。
それぞれがどのレベルになればブランディング成功といえるか、達成レベルを決めておく必要があるでしょう。
数値でレベルを決められない定性的な目標でも「来年10月1日にブランドサイトをリニューアルする」など、期日を決めるなどして言語化します。
一定の期間を置いて効果の測定を実施します。たとえば期末やキャンペーンが終了した時点など。目標が明確に設定されていれば、測定や評価はスムーズに進められるでしょう。
達成できた、できないに関わらず原因を把握することが重要です。成功事例を記録することも今後に役立ちます。達成できなかった項目については改善策を検討し、次期のブランディング施策に反映させましょう。
ブランディングは一度行って終わりではなく、市場や社内の動きを見ながら継続的に修正することが重要です。
選択の幅が大きく広がった現代において、ブランディングで企業イメージを高めることはもはや必須条件と考えられます。その手法は多様化していますが、「自社の価値」を最高の形できちんと伝える本質は同じです。
「自社のよさ、もっと伝えたい」その気持ち、ぜひライデンまでご相談ください。
「エンドユーザーとのエンゲージメントを⾼めたい」「コミュニケーションに⼀貫性を持たせたい」、
「⾼品質なビジュアルデザインを求めている」など、御社の課題をぜひご相談ください。
御社のブランドパートナーとしてご縁が繋がることを、私たちも楽しみにしています。